@  2019  YAKUZEN ACADEMIA

中医師 和田暁の​ 

薬膳の花

碇草(イカリソウ)

学名 Epimedium grandiflorum

 4〜5月になると、関東、奥羽地区の太平洋側山地、中部、近畿地方中南部、四国の山すその樹陰で、イカリソウの姿を見かけるようになります。

 イカリソウはメギ科に属し、中国では古来から「花蕾を食べた羊が発情して、百遍も交合す」と伝えられ、滋養強壮の漢方薬、淫羊霍(いんようかく)として知られています。

​【効能】

 明時代に李時珍が編纂した薬物学の書『本草綱目』には、「辛甘無毒、味甘気香、性温不寒、能益勢精気、真陽不足者に宜之」とあります。3日間ほど酒に漬けてから飲むと、インポテンツ、腰膝の冷えによい。半身不随、老化による目のかすみにおすすめです。

 また、虚熱の歯痛には煎じ汁でうがいをすると効果的。咳、食欲不振には粉にして蜂蜜、五味子を合わせて捏(こ)ね、団子状にして、生姜紅茶と一緒に飲むとよいと書かれています。

 全草を使って、炒り黒豆とお茶にして飲んだり、ティーパックにして、鍋饂飩のスープ、炊き込みご飯、スープ、お粥に入れたりしていただきます。

 骨疎しょう症、不妊にもイカリソウのパワーを利用しましょう。

 1日の使用量は6~12g。

 

※燥性が強いので、ほてり、乾燥しやすい方は避けた方がよいでしょう。

  ウツボグサ 

学名 Prunella vulgaris L.subsp.asiatica

 ウツボクサは漢方では夏枯草(かごそう)と呼ばれています。矢を入れる道具の「靭」に似ているところからつけられた名前だそうですが、恐ろしい植物ではありません。花壇作りにも向くシソ科の多年草で、東南アジア、中国、日本全土で自生し、6、7月に紫の花が咲き、8月初旬、花穂が褐色になりはじめたころ、花序と果穂を採取して乾燥させ、生薬の夏枯(かご)草(そう)となります。

【効能】

 夏枯草は苦味、寒性、肝胆経に属し、清熱の働きをもつ漢方薬として、古くから使われてきました。トリテルペンのウルソール酸、その配糖体プルネリン、多量の無機物質・塩化カリウム、タンニンが豊富で、利尿、血圧降下、抗菌消炎、抗腫瘍の薬理作用が実証され、高血圧、結膜炎、角膜炎、咽頭炎、舌炎、甲状腺などの腫瘍に使用されています

 9gの夏枯草を水600ccで15分ほど煎じ、夏の暑気払いにお茶代わりに飲むとよいでしょう。苦味が苦手な方は、お茶をお米の炊き水に。苦みが気にならなくなります。

 

※体の熱を冷ます力が強いので、冷え性タイプ、胃弱、下痢をしやすい方、妊婦

 は控えましょう。

​       
            女郎花(オミナエシ)
             学名 Patriniae

 

 オミナエシ(女郎花)は秋の七草のひとつで、オミナエシ科の多年草、秋を代表する花です。日本、中国、朝鮮半島など北東アジアに広く自生し、いにしえの人々は、女性の姿を連想しました。万葉の時代から愛でられ、「女郎花 秋の風に うちなびき 心ひとつを たれによすらん」と万葉集(藤原時平の歌)に詠われています。

 枯れた地上部の全草を乾燥したものは「敗醤根(はいしょうこん)」と呼ばれ、漢方薬として利用されます。

​【効能】

 敗醤根は清熱解毒の代表薬で、微寒性と辛苦味を持ち、胃、大腸、肝で働き、清熱消炎解毒、浄血排膿、肝庇护の薬効を発揮し、腹痛、下痢、産後悪露、急性虫垂炎、肝炎、腸閉そく、皮ふ化膿症、流行性耳下腺、目の腫れに使われます。

 また、敗醤(はいしょう)には、精油も含まれていて、この精油の血行促進作用を利用し、うっ血して生じる胸腹の疼痛も和らげることができます。生のまま汁を作り、皮膚化膿に外用しても効果があります。最近、マウスを使った実験で抗腫瘍効果が実証されて注目を集めています。

   煎じてお茶がわりに。春は若葉を摘み、ゆでて、こんにゃくと白和えにしてもおいしくいただけます。

 1日の使用量は15g30g。 

 

※妊婦が使用すると流産をまねく恐れがあり、厳重な注意を。高齢者、貧血、

 産後など体力不足の場合も控えましょう。

 
 
金木犀(キンモクセイ)
学名 Osmanthus fragrans var. aurantiacus

 金木犀は中国では桂花(けいか)と呼ばれています。山水画の世界を堪能できる漓江湖畔の桂林は、日本人にもお馴染みの名所ですが、初秋に採集される桂花で浸けた桂花酒は桂林の名物酒、世界中で愛飲されています。 

 昔むかし、ある青年が丹念にキンモクセイを栽培しました。中秋の節に花から仙女が降りてきて青年と結ばれ幸せに暮らしていましたが、漓江へ釣りに出かける際、亀王に捕えられ、夫婦離散の運命に遭いました。けれども、仙女は村と青年を恋しく想い、金木犀を満開させたとか。中国に残る物語です。

 

【効能】

 中医学の古書『本草匯言』には 「散冷気、消瘀血、止腸風血痢」「腹内一切冷気」と記載されています。

 薬膳では、辛温、肺胃経に属すると考え、呼吸器や胃腸の冷えによく使われます。

 香りの食材は気の滞りによい、黄色食材は胃腸によいとされ、胃腸の膨満感、げっぷ、排ガス、冷えによる下痢、または口臭、歯痛などに幅広く使われています。

 初秋に摘んだ花を乾燥させてから湯を注げば、胃腸や呼吸気道に優しいハーブティーに最適です。

 また、細かく刻んだ花を上新粉に混ぜて、胃もたれを防ぐ蒸し団子に。紅茶、三温糖と混ぜて、白玉団子に絡めるシロップも美味。キンモクセイの風味を五感で味わい、心と体のリフレッシュに役立てましょう。

 
 
石榴(ザクロ)
学名 Punica granatum

 

石榴といえば、古代の中国詩人・王安石が、樹木の緑の中でひときわ目を引く鮮やかな石榴花に魅力され、「万緑叢 中紅一点』という詩を詠んだことで知られています。また、トルコでは、結婚式で新郎が石榴を地面に投げ、飛び散った種の数だけ子どもが生まれるという言い伝えがあります。

 西アジアと西ヨーロッパが原産地とされる石榴は、張騫が西域訪問で安息国から中国に持ち帰ったもの。日本には延長元年(923年)に渡来。現在は東北地方から沖縄まで、日当たりのよい場所で栽培でき、6月初めに赤い花が咲きます。

​【効能】

 漢方では古くから石榴の果、実皮と樹根の皮を薬用としてきました。主要成分はアルカロイド、タンニン、粘液質など。収斂、抗菌(緑膿菌、赤痢菌、チフス菌)、抗ウイルス、抗真菌(皮膚真菌)作用をもち、主に胃と大腸経に働きます。

 16世紀の薬物名著『本草綱目』では、「酸、渋味、温性、無毒」とされ、咽頭の燥渇、下痢、崩漏(婦人の不正出血)、尿失禁、皮膚そう毒に使うとあります。

 

甘石榴

苦、酸、渋、温、無毒。果実は汁ごと絞って、咽頭燥渇、駆虫に使われる。 酸石榴と根皮:酸、渋、温、無毒。種ごと果実を一緒に汁を絞って飲ませる。腸滑久痢(慢性下痢)、尿失禁の場合は焼いて粉末 にして飲む。これが著名な「黒神散」である。

 

石榴の根

水で煎じ、駆虫の場合は石榴茶にして飲むとよい。女性閉経の場合は根を炒って、水で煎じた濃縮液を飲むとよい。膿血便にも使われる。

 

石榴の花

干して、止血のために飲むとよい。石榴根皮は1日常用量9~15g。

 

* 胃粘膜を刺激し、胃を荒らすことがあるので、胃炎の人は控えましょう。

 

 

   

 

 

山帰来(サンキライ)

学名  Smilax glabra

 

 秋になると鮮やかな赤い実をつけ、リース作りに使われるは山帰来はユリ科の植物。根茎を乾燥させたものは土茯苓(どぶくりょう)と呼ばれ、夏秋に掘り、泥と細い髭を洗い落として乾燥させ、薄くスライスして、風通しがよいところで保存して、漢方薬として、古くから使われています。

【効能】

 山帰来は平性で、甘味と淡味、肝経と胃経に働き、解毒、除湿、関節の動きをスムーズにし、痛みを止める薬効があるとされています。

 明時代の『滇南本草』『本草綱目』などの巨著には、土茯苓は筋骨挛痛、脚気(ビタミンB1欠乏による心不全の浮腫みと末梢神経障害)、疔瘡、廱腫、丹毒など各種の皮膚感染症、瘰癧(頸部リンパ節が数珠状に腫れる、おりものが多い、梅毒、尿道感染症、水銀の解毒に適すると記述されています。

 現代では、以上の疾患のほかに、痛風、リウマチ関節痛、腎炎、レプトスピラ症にも使われています。

 煎じてお茶にするか、酒と水で煮たてて飲むのが一般的です。また、皮膚病には粉末にして、水と混ぜたものを塗るとよいでしょう。痛風には、土茯苓とはと麦のスープがおすすめです。

 1日の使用量は15~60g(レプトスピラ症は(120gまで使用可)。

 
 
山楂子(サンザシ)
学名 Crataeguspinnatifida

  

 

 6月に白い花が咲き乱れ、10月に目を見張るほど真っ赤な実をつける山楂子。ビタミンC、クエン酸が豊富で、レモンよりも古くから中国漢方として使われてきました。

 

【効能】

 最古の記述は『神農本草経』に載っています。

  性:微温

  味:甘酸

  帰経:脾胃肝経。

  効能:消食健胃、行気導滞、活血止痛。

   

 肉食の消化を助け、胃もたれ、下痢、腹痛、気滞血瘀による生理不順、産後悪露が止まらない、胸が痛む方に向いています。

 山査子酒は1:3の比率でホワイトリカーに漬けます。また、種と蔕を取り除き、水から煮て練り梅代わりに、肉、野菜サラダのソースに。甘味をつけてジャムをつくり、ヨーグルトのソース、フルーツ寒天よせ、蒸しケーキ、タルト、ミルフィーユなどの菓子材料に使ってもよいでしょう。種もしくは実を肉と一緒に煮込むと、肉がやわらかくなります。

   

※妊婦には大量使用は禁忌。胃腸虚弱、痩せタイプ、胃酸分泌過剰の方が使う場

 合も控えめの分量で。

参考文献:『中医薬膳学』全国中医薬大学指定教科書(譚興貴、他17名著、中国中医薬出版社)

 
 
山茱萸(サンシュユ)
学名 Cornus officinalis
 

 山茱茰の開花時期は3月中旬ごろ。樹木一面に広がる黄色い花は、同時期に咲く梅の花と美しいコントラストを描き、春の訪れを告げてくれます。山茱茰花の別名は春黄金花(はるこがねばな)。真っ赤な果実は秋に採集され、秋珊瑚(あきさんご)と呼ばれています。

 山茱茰は中国浙江省と朝鮮半島中北部に原産するミズキ科ミズキ属の落葉高木です。江戸幕府の小石川御薬園に「朝鮮経由で日本に渡来したのは享保7(1722)年」と記述された資料が残っています。果実から種を除いて乾燥したものは、漢方薬として薬用されます。

【効能】

 明時代に李時珍が編纂した『本草綱目』には、「酸平、温肝補腎、除風、治月経過多、老人頻尿」とあります。加齢による夜尿頻尿、腰膝がだるい、インポテンツ、耳鳴、耳が遠いなど腎虚の方、体力低下による不正出血、汗かきなど気血不足の方に適応する穏やかな滋養薬で、滋養強壮の漢方方剤として名高い「八味地黄丸」「六味地黄丸」、「牛車腎気丸」、「右帰丸」、「左帰丸」に使用されています。

 薬酒は、30%ホワイトリカー10に対して、山茱茰1の割合で漬けます。

     また、山茱茰1:酢4:蜂蜜5の割合でつくるサワードリンクもおすすめ。

 1日の用量は3~9gを目安とします。

 

 

※収斂固渋の働きが強く、むくみ、排尿困難、排尿痛の場合は避けます。

 
 
紫苑(シオン) 
学名 Aster tataricus

 紫苑はキク科紫苑属の多年草で、中国の東北部、華北、甘粛、安徽などに分布。温暖、湿潤な気候を好み、耐寒力がとても強い反面、乾燥には弱く、中国北部と東北部、モンゴル、シベリア、朝鮮半島に分布しています。日本では四国や九州でわずかに自生し、中国から朝鮮半島を経て薬草として渡来しましたが、花が美しいので薬草より観賞用として栽培が盛んになりました。

 7世紀後半〜8世紀後半にかけて編まれた万葉集では「鬼の醜草(おにのこしぐさ)」の名称で登場し、平安時代前期の古今和歌集では「紫苑(しをに」、平安時代中期の源氏物語では、薄紫色のことを「紫苑色(しおんいろ)」と表現。

紫苑の花の間から中秋の名月を眺めたのでしょうか、十五夜草(じゅうごやそう)という呼び名もあります。

​【効能】

  紫苑は8〜9月に花が咲き、 9〜10月に実りの時期を迎えます。よく洗って、5mmのスライスにして天日干し。または水でやわらかくしてから、30分〜1時間ほど蒸し、天日で干します。

 性質は微温性、味は苦味と甘味。肺経に働き、薬効としては潤肺、下気、消痰止咳の効能をもっています。

 急性と慢性の咳嗽、痰が多い、喘息、喀血によく使われます。

 現代では紫苑に含まれるサポニンが気道粘膜の分泌促進をして、祛痰鎮咳作用、抗菌作用、抗ガン(エールリッヒ腹水がんに対する)作用があるとされています。

 紫苑が使われる代表的な方剤としては、止嗽散(紫苑(しおん)、百部(ひゃくぶ)、桔梗(ききょう)、荊芥(けいがい)があります。

 1日の用量は5〜10g。

 400cc~600ccの水で煎じるとよいでしょう。

 

 

馬歯莧(スベリヒユ)

​学名 Portulaca oleracea

 

 猛暑にも負けずに、乾燥耐性と熱耐性をもつスベリヒユ。日本全土で見られ、畑や道端などに自生し、日当たりさえ良ければ、どんどん伸びていきます。一般的に、農家では雑草あつかいを受けますが、山形など一部の地域では食用として栽培。乾燥させたものは野菜不足を補う保存食となります。

 薬膳では夏の風物詩ともいえる植物で、苦瓜、冬瓜、トマトと同じく、夏に負けない体づくりには欠かせないごちそうです。

 漢方生薬では、スベリヒユの全草を「馬歯莧(ばしけん)」と呼び、清熱解毒薬として使われます。または長寿草、長命菜、五行草(葉は青色、梗は赤色、花は黄色、根は白色、種子は黒色と五色そろえていることから名つけられた)など複数の呼び名があります。

【効能】

 明時代に李時珍が編纂した『本草綱目』には、馬歯莧について「味が酸、性質は寒、無毒。脚気浮腫、産後血痢、肛門腫痛、赤白痢によい」と記述されています。

 心経と大腸経で働き、抗菌利尿作用が強く、血管収縮、子宮収縮の働きも。現在は細菌性下痢(赤痢菌、大腸菌、チフス菌)、歯の腫れと痛み、水虫、湿疹、できもの、蜂刺され、毒虫咬まれ、大腸癌の予防に使われています。

 新鮮な全草60gをさっとゆで、3cmに切って、豆腐と一緒にねばねばのお吸い物やお粥をつくったり、サラダに仕上げたりするとよいでしょう。

 皮膚疾患の場合は、新鮮な全草の絞り汁や乾燥した粉末を用いて、皮膚の患部に湿布します。

 

※解毒力が強いので、虚弱体質、冷えタイプは控えたほぅがよいでしょう。墜胎の働きもあるので、妊婦への使用は禁忌です。

 

 

青蒿(セイコウ)

学名 Artemisia apiac

 2015年、中国中医科学研究院の屠呦呦(トゥー・ユーユー)教授は、漢方薬に使用する生薬の青蒿から「アーテミシニン」という抗マラリアの薬を発見したことによりノーベル賞を受賞しました。マラリアは年間1.98億人が感染し、そのうち58.4万人が死亡。亜熱帯、熱帯地域では非常におそろしい感染症の一種です。

 「アーテミシニン」の発見のきっかけは、紀元3~4世紀の葛洪による『肘後備急方』。「青蒿一握、水二升を以て浸し、汁を絞り取り、之を服し尽くせ”」との記述から、抗マラリアの場合には加熱してはいけないとヒントを得て、エーテルという油性の溶媒で低温抽出し、アーテミシニンの発見に至ったそうです。多くいのちを助けられたアフリカの国々では「神薬」と呼ばれているほど。ノーベル賞授賞式で青蒿模様のブローチを胸に付けた屠先生は、中医学が人類の健康を守る宝庫というメセッジーを世界に向けて示しました。

 

 青蒿の開花期は8月~10月で、10~11月に実がなります。薬用に関する記述は馬王堆漢墓の帛書『五十二病方』にあり、その後『神農本草経』『本草綱目』などにも記載されています。青蒿はキク科カワラニンジンの地上部の全草で、春から夏にかけての開花の前までに青い茎葉を採集し、日陰で干して、薬用として使用されます。

【効能】

 青蒿は苦味、微辛、寒性で肝胆腎経に帰属し、清熱解暑と截疟(抗おこり)、虚熱の解消の働きをもち、熱中症、ほてりタイプの微熱、結核病、膿血便、マラリアの治療に使われています。

 軽く煎じるか、新鮮な葉を絞って飲みます。

 1日の用量は3~10g。

 膿血便には青蒿、よもぎ、淡豆豉各9gを煎じて飲みます。

 ほてり、体力低下、微熱、イライラ、口渇には青蒿500gで汁を絞り出し、シロップ風にして飲むか、麦門冬、人参粉末を入れて混ぜ、丸めたもの1回5gを食後に重湯で飲みます。

 青蒿鼈甲湯も補陰清熱の代表的な方剤で、夜熱朝涼、熱性病の治りかけによく使われます。ただし、青蒿はふつうの青蒿と黄花蒿があり、アーテミシニンは黄花蒿のみに含まれます。また、黄花蒿も60℃以上の加熱で、アーテミシニンが完全に分解してしまいます。

 

 

 

千日紅(センニチコウ)

​学名 Gomphrena globosa

 

 千日紅はヒユ科の1年草で、原産地はブラジル、熱帯アメリカとアフリカですが、日本や中国の長江以南地域でも盛んに栽培されています。

 日当たりのよい場所を好み、乾燥と熱に強く、寒冷や多湿が苦手。10℃以下の低気温では成長不良になり、20~25℃が適温。しかし、真夏の高温下でもよく育ちます。開花期が7月から10月までと長いことから、花言葉は色あせぬ愛。

 中国茶の世界では、ジャスミン、白茶で千日紅花を包み、球形にして保存し、来客や宴の最後に、湯を注いだ花茶をふるまいます。グラスの中に花を咲かせることは、中国のおもてなしの定番です。

【効能】

 千日紅にはアミノ酸、ビタミンC、ビタミンEと多種類のミネラルが含まれ、美容によいといわれています。薬用部位は花序と全草。主成分はゴンフレニンです。

 甘味、微鹹味で、平性。去痰止咳と平喘作用に優れ、主に肺経で働き、急性と慢性気管支炎、気管支喘息、百日咳、肺結核の喀血によく使われます。

 中国では、注射液を用いて、肺経のツボ注射も行われています。

 また、清肝明目、止驚の働きもあり、頭痛、めまい、イライラ、目の充血、高血圧が気になる方に向いており、小児の驚風(意識消失をともなう痙攣など小児期によくみられるもの)、夜泣き、赤白痢(膿血便)にも使われます。

 1日3~10gを目安に、お茶で飲むのがよいでしょう。

 

 

 椿(ツバキ)

学名 Camellia

 

 中国では、椿を「山茶」と呼んで、昔から不老長寿、縁起のよい木とされてきました。

 万葉集にも、「巨勢山乃 列々椿 都良々々尓 見乍思奈許湍乃春野乎」と9首の歌が出て、何事にも媚びない凜とした楚々たる気品に満ちた花として愛されてきました。

 18世紀中葉、貿易商は中国茶とともに、椿の苗や種をヨーロッパに持ち帰り、大ブームを巻き起こしました。フランス人作家のアレクサンドル・デュマの名著『椿姫』が、ヨーロッパにおける当時の熱狂ぶりを物語っています。

 また、椿は観賞だけではなく、お茶、椿油などとしても食用されています。

​【効能】

 椿の花は涼性で、苦味、辛味(香りの意味)、甘味を持って、肺経(呼吸気道、皮膚)、肝経(解毒、循環、中枢神経と自律神経。子宮生理)に働き、涼血、止血、散瘀、消腫(血液を浄化し、サラサラに流れさせ、止痛止血)作用があると古くから伝えられています。

 皮膚の赤み、化膿、ソバカス、シミ、喀血、痔の出血、女性の不正出血、血尿、打撲ねんざにおすすめです。

 半開きの花を採取して、お茶でさっと煮出して飲むか、酢との相性もよいので、さっと酢湯で湯通し、酢のものにしても美味しくいただけます。

※胃腸が弱くて、冷え性、下痢をしやすい方は避けたほうがよいでしょう。

 
 
南天(ナンテン)
学名 Nandina domestica

 真っ赤な実を垂れる南天は、お正月に欠かせない生花。「難を転じるという意味だから、縁起の花ですよ」と、30年ほど前に日本の知人から教わり、以来、お正月には南天を上手に生けられるよう心がけてきました。

 南天は中国原産ですが、日本では赤飯を南天の葉に乗せる習慣もあります。お祝いの赤飯に縁起の葉として使われると思っていましたが、葉に含まれたナンジニンが熱と水分で変化してでる微量のチアン水素に防腐効果があるということも南天の葉を用いる理由のようです。

​【効能】

 晩秋から冬季にかけて、実が赤くならないうちに採集して、咳止め薬として使われます。

 1日の使用量は5~10gを厳守。南天エキスを使ったのど飴が有名ですが、料理に生かす場合は、土瓶蒸し、あんかけ、お粥に入れて使うとよいでしょう。また、南天の酸味、甘味成分は強壮剤にも。

※南天の実にはドメスチン(ナンテニン)というアルカロイドが含まれているので、知覚神経、運動神経末梢に強力な麻痺作用があり、過度に使用すると神経、呼吸の麻痺を引き起こします。1日に使用量を必ず守りましょう。

 

 

参考文献:『近代漢方薬ハンドブック』(高橋良忠、薬局新聞社)

     『薬草・毒草300プラス20』田中考治解説、朝日新聞社)

       

 
合歓花(ネムノキ) 
学名 Cortex Albiziae

 本格な夏の到来を告げる合歓の花は、中国(東北、華東、中南および西南各地)、朝鮮半島、日本、中東に自生するマメ科ネムノキ亜科の落葉高木です。 

 夜になると、葉が眠ったように閉じることから、ねむの木と名がつけられたといわれています。

 温暖、日当たりがよい環境に適していますが、耐寒性も強く、6~8月に咲き、8月~10月に実をつけます。

 松尾芭蕉は『奥の細道』で、ネムノキの美しさに感動し、中国の春秋時代の傾国の美女、「西施(せいし)」をたとえて、「象潟(きさかた)や 雨に西施がねぶの花」と詠んでいます。中国医学では、古くからネムの木の皮を生薬として常用。一般的には、皮を剥き干してから使っています。

 

【効能】

『神農本草経』では、合歓皮について「主安五臓、和心志、令人歓楽無憂」と書かれ、情緒の安定に効果があるとされています。また『本草綱目』には、「和血、消腫、止痛」とあり、血行促進、腫物の解消に効果があると記載されています。

 合歓皮は平性、甘味。帰経は心、肝経。効能は安神解鬱、活血消癰。

 心身不安、不眠、憂欝、打撲捻挫、骨折、皮膚化膿症などに使用。また、現在は抗腫瘍作用も実証されています。

 10~15gを水で煎じて1日の量として飲み、粉末は外用に使えます。

 薬膳応用としては、合歓皮茶、卵とじ、雑炊が美味。

 

※合歓皮は子宮筋収縮を促進する力が強く、流産の恐れもあるので、妊婦は避けたほうがよいでしょう。

 
 
凌霄花(ノウゼンカズラ)
学名 Campsis grandiflora

 夏に鮮やかなオレンジ色の花を咲かせる凌霄花(ノウゼンカズラ)は、中国と北アメリカ原産の落葉つる性植物で、日本には10世紀前半に入ってきました。「家毎に凌霄咲ける温泉(いでゆ)かな」と正岡子規の俳句にも登場した馴染み深い花です。

「凌」は「しのぐ」、「霄」は「大空」の意で、ツルがからみついた木を凌いで(高さを超えて)、空に向かって咲く様を表現しています。つるを壁や木に生やし、どんどんラッパ状の花を咲かせる姿から、英雄や勝者を祝福するファンファーレのトランペットを連想し、「名声」「名誉」という花言葉がつけられました。英名は、ラッパに似た花の形から「トランペットヴァイン(Trumpet vine)」や「トランペットクリーパー(Trumpet creeper)」と呼ばれています。

【効能】

 古くから薬用され、血行促進の活血薬として愛用されました。

 性質は寒、味は甘、酸(花)か苦涼(根)。帰経は肝、心。清熱、活血去瘀、通経、利尿、涼血、祛風の働きがあります。

 咽頭痛、咳、生理不順、産後の乳腺炎、蕁麻疹、皮膚の痒み、痤瘡、リウマチ、関節痛、骨の痛み、打撲に使われます。また、薬理実験で血圧降下作用が認められています。

 春に根を掘って洗浄し、スライスして乾燥させます、夏秋に花を採り、そのまま乾燥させ、風通しのよいところで保存。

 1日の根の使用量は0.3~1g。花の使用量は5~9g。

 煎じて飲むか、湿布として使用します。

 

※「堕胎花」の別名があるほど流産の危険性があるため、妊婦には禁忌です。

参考文献:『中国薬典』

 
 
蓮(はす)
学名  Nelumbo nucifera Gaerth    

 

 初夏の池、湖、畑で、美しく涼やかに咲くの花を見つけると、鬱陶しい気分がパッと晴れる気がします。

 蓮の実は、中国では最強の生命力をもつ実、と称されています。乾燥させた実は泥石の隙間に置かれて、猛暑、厳冬を越えても負けずに生命力を保っています。20年ほど前に、瀋陽付近の古代岩から蓮の実が発見され、考古学者が鑑定したところ、なんと地下で5000年も眠っていたものと断定。植物専門家の処理で水に浸したところ、新芽が出て話題になったことがありました。

 

【効能】

 蓮の実は、慢性下痢に使われている「参苓白術散(じんりょうびゃくじゅつさん)」、体力が弱まった方の膀胱炎に使われる「清心蓮子飲(せいしんれんしいん)」など漢方方剤にも配合されています。

 こころを安定させ、不眠、動悸に、効果があり、補腎(ホルモン機能を調整し、骨盤腔内の臓器組織、骨髄、脳の健康維持)のパワーも絶大。アンチエイジングに欠かせません。

 実を渋皮つきで使うと、過労による不正出血、おりものが多い女性には強い味方です。

 蓮の実の芯は中国だけではなく、ベトナムなど南国にも馴染みのもの。熱を冷まして、鎮静の働きがあり、高血圧、イライラ、不眠、動悸、口内炎、動悸にはお茶でセルフケアーしましょう。

 薬膳では、蓮の花びらの活血止血の働きに注目。打撲捻挫、生理痛、不正出血にお茶、サワードリンク風などによく使われます。また、花芯の渋味はとくに収斂作用があり、虚弱体質の遺精、おりものが多い、不正出血におすすめです。

 

戻し方のコツ→1:20の水で5分ほど沸騰させ、火からおろして自然に冷ます。

料理の応用

お茶(実の芯)、お粥、スープ、炊き込みご飯、蒸しパン、甘味控えめの羊羹、 豆乳ムース、かるかんなど。

 

※ 気滞タイプ、ガスが溜まりやすい、便秘のときは控えましょう。

 

参考文献:『神農本草経』、『本草綱目』、『随息居飲食譜』ほか。

 
 
薔薇(バラ)
学名 Rosa 

 薔薇は、バラ科バラ属の総称で、東京あたりでは5月ころが開花のシーズン。バラ園やバラ好きの庭先では、さまざまな種類のバラを見かけます。

 日本で「薔薇」と呼ばれている花は、中国語では玫瑰花といいます。『食物本草』には「避邪悪之気、食之芳香甘美、令人神爽」と書かれており、古くからバラの毒消しと鬱気分を解消する飲み物として使われました。

 鮮やかな色は目を楽しませるだけではなく、花蕾には芳香性精油テルペン化合物、ビタミンAビタミンB1ビタミンB2ビタミンC糖質、繊維質も豊富に含まれ、美容と月経調和の食薬兼用素材として、女性の強い味方です。もちろん、男女問わず、気血の巡りに欠かせないものです。

 薬膳に使うものは、咲きはじめたらすぐに、花弁が厚くて、色が鮮やかで 濃く、芳香性の高いものを摘み、弱火で乾燥させます。時間をかけて天日干しをすると、香りと色が落ちてしまうので要注意。乾燥させたたバラは、お菓子の香りつけ、お茶、お酒漬けなどに広く使われます。

【効能】

甘と辛。「辛」には、香りがあり、血・水を巡らせることを意味します。

帰経肝経(肝臓、情緒活動に関する中枢神経、視覚系・月経を調節)と脾経肝臓、情緒活動に関する中枢神経、視覚系・月経を調節)。「帰経」とは、素材がどの臓器組織に働くかの、道しるべに働く薬食兼用食材のことをいいます。

性質温(血行促進、体を温めることを意味している性質)。 

 

 理気解鬱、活血に効能があり、生理痛、おりものが多い、咳、痰に血が混じる、うつ気味、頭痛、腸炎、下痢、痔出血、乳腺症、リウマチ関節痛、神経痛、しみ、ソバカスなどに効果があります。また、つぶして使う外用湿布は打撲捻挫用に。

①  血瘀による生理不順:黒い血塊が見られる場合には6~10gを水で煎じて、

紹興酒、黒砂糖を加え、朝晩に飲ませるとよいです。紹興酒代わりにワインを使って、サングリアにする方法も。

②ストレスによる胃痛、げっぷ、腹部が張る:1~2gの花を細かく刻み、お湯

を注いでしばらく蒸らし、バラ茶で飲む。また、細かく刻んだなつめと混ぜ、蒸しパンでいただいても美味。バラ茶は乳腺症、しこりがある、胸が張って苦しいときも、気血を巡らせ、しこりを解消するのにも役立ちます。

③ ストレスによる頭痛、動脈硬化が原因の頭痛:バラ5~6個を使ったバラ茶をお茶代わりに飲みます。そら豆の花を加えることも。

⑤  咳血、吐血:新鮮なバラの花をミキサーにかけて、水、氷砂糖と一緒にとろ火で煮たバラジャムを

⑥ しみ、ソバカス、リウマチ関節痛、坐骨神経痛:1対10の比率で酒に漬けて飲むとよいでしょう。

※女性の美と生理の調和のために、バラはおすすめの素材ですが、血行が過剰に

 活発化すると、流産の危険性もあるので、妊娠中は禁忌です。

                    

 

 

紫ウコン(莪术/がじゅつ)

学名 Curcuma zedoaria

 5月から夏にかけ、屋久島、種子島を訪れると、香り豊かな紫ウコンの花に魅了されます。紫ウコンは寒さに弱いため、享保年間に渡来してから、もっぱら薩摩や琉球で栽培され、日本本土での花のつけ率は非常に低いようです。

 生姜科のウコンといっても、秋ウコンや春ウコンとは違い、黄色色素のクルクミンはほとど含まれておらず、代わりにシネオールやカンフェーンといった精油成分が豊富です。

 葉が枯れた晩秋と冬季に根茎を掘り、よく洗ったあと蒸して乾燥させたものが漢方で用いる莪术(がじゅつ)です。

 

 

【効能】

 莪术は苦味と辛味(香り)が強く、温性、肝脾経に属し、破血理気と通経消食の効能があり、強力に気血を巡らせ、排ガス、胃内の不消化物、頑固な血塊を取り除く効果があるといわれ、古くから愛用されています。

 現在の中国では、香りなどの成分が抗腫瘍、白血球細胞の保護、芳香健胃薬として、専門家の指導の元で使われます(一部の皮膚感染抑制の軟膏は市販されています。

 生理不順、子宮筋腫、卵巣嚢腫、早期子宮頚がん、卵巣がん、皮膚がん、悪性リンパ瘤、原発肝臓がん、甲状腺がん、肺がんに抑制、直接殺傷作用などについて現代薬理で実証され、ワクチン開発の試みも話題になっています。

 また、精油を外用し、放射線療法による皮膚の火傷の減軽効果も文献で報告されています。 

 1日の使用量は2~5g。

 豆乳と混ぜて飲んだり、お粥や絞り豆腐に混ぜて茶巾蒸しをしたりすると無理なくとれます。

 

※生理量が多い方や妊婦には禁忌。

 

 

百合(ゆり)

学名 Lilium 

 美人を形容して、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩けば百合の花」ということわざがあります。どれも生薬に使われている花ですが、百合の花は5月からから8月にかけて咲く、アジアに自生する多年草です

 野生種を大別すると、鉄砲百合、山百合、スカシ百合とあり、陽光地や明るい半日陰地でよく育ちます。鑑賞用にはもちろんのこと、百合の花は中国古くから不眠症の改善に利用されてきました。漢方薬用の百合根は、9月頃に採集するものが多く使われています。

【効能】

『滇南本草』には「百合花安神寧心定志」と記述され、近代名医張山雷氏も『本草正義』のなかで、「百合の花は夜合朝開、肝火上浮、夜館不眠に顕著な効果がある」と指摘。中国ではお茶代わりに使われることが多いです。

 

百合の花:性質は涼性、味は甘、微苦。肺経と肝経と心経に働きかけ、解熱、鎮

咳、利尿作用があります。呼吸気道の急性炎症、慢性炎症で、乾燥咳、痰の粘り、尿の濃縮、怒りっぽい、寝つきがよくない、顔面の紅潮、不安、不眠などの改善に役立ちます。

 

百合根:滋養、鎮静の働きをもち、乾燥肌や呼吸気道の粘膜に潤いを与え、気

管支炎や肺炎などの回復期に、少し炎症が残っていて咳がでるような場合に用います。よく洗って、沸騰したお湯でさっとゆで、乾燥させたり蜂蜜に漬けたりします。

 

山百合の蕾:黄色い山百合を乾燥させて、「金針菜」と呼びます。鎮静、解熱、

補血の作用も抜群。さっとゆで戻して、豚肉と炒めたり、佃煮にして、ご飯と混ぜたりするほか、酢もの、ナムルスープの具にしても美味。カルシウムが豊富で母乳不足の産婦にも欠かせない食材のひとつです。

 

 

紫丁香花(ムラサキハシドイ)

​学名 Syringa vulgaris

 

 紫丁香花が華やかに咲きはじめるのは4月~6月。美しい姿と香水になるほどの甘い香りが人々を魅了し、札幌市内では街路樹や庭先でよく見かけ、市の花に私邸されています。開花時期にはライラック祭りがおこなわれたり、渡辺淳一の名著『リラ冷えの街』のタイトルにも使われています。

 紫丁香花はモクセイ科ハシドイ属の落葉樹で、「リラ」はフランス語。英語では「ライラック」と呼ばれています。

 原産地はヨーロッパ南東部からアフガニスタン。中国でも古くから栽培され、盛唐時代の詩聖杜甫は、『江頭四咏』で「丁香体柔弱、乱結枝犹垫」の名詩を残したほど。中国では、高貴な花として人々に愛されてきました。また、トルストイの長編小説『復活』のなかで、青年貴族ネフリュードフがカチューシャに想いを託した花としても有名です。

【効能】

 葉、樹皮、樹根に薬効があることが知られています。葉は苦味で、寒性、清熱解毒燥湿、止咳、止瀉(下痢とめ)の効能があり、咳痰、急性下痢、耳下腺炎に使われます。

 新鮮な葉でつくったエキスは腸内細菌を抑制するほかに、急性黄疸型肝炎の治療の一翼を担う「肝特霊」錠剤の主成分にもなっています。また、樹皮も清熱燥湿、止咳定喘に使われます。

 モンゴル医学では根幹を使って、頭痛、不眠、動悸、息切れ、胸が刺されたような痛みに使用されています。

 一般家庭では、1日15~30gの葉を水で煎じて、お茶にするとよいでしょう。

​※ 植物の名称に下線を引いたものは、本サイトの「薬膳の世界」トップページか、「薬膳アカデミア オリジナル料理」にリンクしています。